新着情報
2019 / 01 / 15 17:00
News Summary
2019年1月4日
本日のラインナップ
<世界>
・今年の市場テーマ
<米国>
・このセクター、もはや弱気相場の避難所にあらず
・投資家、MMFへ資金退避
<中国>
・北京の若者、iPhoneへの欲求薄れる
詳細は添付ファイルをご覧ください。
News Summary January 4, 2019.pdf (0.91MB)
2018 / 12 / 30 08:00
新聞掲載情報
2018年12月19日 日本経済新聞『十字路』
『信用リスクと米国経済』
信用リスクの増大は、企業の資金コストを押し上げ、今回のバブルの根幹をなす企業の投機的な金融エンジニアリングを直撃する。M&A(合併・買収)や自社株買いを借り入れに頼ってきた企業の資金繰りが悪化する一方、社債や株価の値下がりで、投資家の損失が拡大するというバブル崩壊のプロセスが加速していくのである。
ジャンク債に始まる社債利回りの上昇は、国債利回りの低下と同時に起きている。社債や株式が売却され、国債が買われているのだ。リスク回避志向が高まっているため、財政赤字と経常赤字の双方が拡大しているなかで、国債利回りが低下するほど資金シフトが大きいのである。
市場が信用リスクに反応するようになったのは、10月に原油価格が急落し始めてからだ。ジャンク債市場の半分強がシェールオイル関連企業で、それまではFED(連邦準備制度)の引き締めにもかかわらず、原油価格が堅調だったため、ジャンク債市場の高利回りに資金が引き付けられていたのである。
原油価格の急落は、また物価のインフレ懸念をデフレ懸念に変えてしまった。これは、すでに進行中の資産デフレを加速させ、その逆資産効果で投資や消費を落ち込ませ、経済の不況化を推し進める。量的金融緩和→資産インフレ→景気刺激のプロセスが逆回転を始めたのである。そうなると、FEDが利上げ回数を減らしても効果的ではない。資産インフレを止めたのは、利上げではなく、量的引き締めだからである。
問題は、バブル崩壊後に、次なる量的緩和で再び資産インフレがつくれるかだ。さらに、保有資産の値下がりで、すでに負債超過になっているFEDに政策の決定が委ねられるのか、という政治問題が浮上していることにも、留意しなくてはならない。
2018 / 11 / 16 14:30
新聞掲載情報
2018年11月13日 日本経済新聞『十字路』
『中国はなぜ成長できなくなったのか』
中国経済が急減速しているのは、雇用が減少し、生産性の伸びが落ちてきたからである。1990年代以降の急速な工業化の下で、第2次産業の就業者数は、昨年で全産業の27%に達しているが、2010年代に入ると毎年減少している。生産性の最も高い第2次産業が拡大できなくなったため、全体の生産性の上昇が鈍ったのである。
国際労働機関によると、17年の就業者数は前年比マイナス0.2%と2年連続の減少だ。1人当たり付加価値額(実質、生産性)の伸びは07年の13.3%から17年の6.6%まで下がった。結果として成長率は6.4%になるが、実態はもっと低いはずだ。
第2次産業の1人当たり付加価値額は1万5500ドル(国連、15年)だが、第3次産業は6800ドル、第1次産業は1900ドルと大変に大きい格差だ。生産性の一番低い第1次産業から、一番高い第2次産業に労働力が移行する工業化が終わり、脱農業化から出てくる余剰労働力は第3次産業に向かわざるを得なくなっている。ちなみに、中国の第2次産業の就業者比率27%は、日本とドイツとほぼ同じだが、米国、英国では17%台でしかない。
歴史的経験からすると、工業化が終わり、サービス化が始まると、成長率が大きく減速する。この過渡期に、工業化を急いだ国ほど過剰設備、過剰債務という難題が待ち受ける。中国が特に苦しいのは、この転換の時期に国際収支が悪化してきているからだ。
経常収支の国内総生産(GDP)比が07年の10%台の黒字から、直近では若干の赤字に転落している。資本の流出を抑制しても、対外債務の返済のため人民元安への圧力が収まらない。米中貿易戦争は、中国にとって主戦場ではあるまい。経済の安定のための処方箋が見つかっていないことが主たる問題なのだ。
2018 / 10 / 16 07:00
新聞掲載情報
2018年10 月5日 日本経済新聞『十字路』
『米国経済は本当に強いのか』
米国金利の上昇と、量的引き締めが新興国の通貨危機を招いている。外資に頼った急激な工業化が持続できなくなってきたのだ。新興国の経済は、2020年代にかけて、日本が経験したような長期低迷の時代に入るだろう。
この新興国経済の低迷は米国をはじめとする先進国にとって2つの問題をもたらす。第1は、多国籍企業の業績の悪化である。先進国の立場からすると資本財輸出の減少である。第2は、エネルギーをはじめとする資源価格の下落がもたらすデフレ効果である。
金融の引き締めは、先進国の資産バブルも潰していく。不動産価格の下落が始まると、米国消費者物価の上昇を支えてきたエネルギーと家賃という二大要因が消えていくことになる。
このような状況の下では、賃金上昇もそれほど大きなものは期待できないが、物価上昇率が下がってくると、実質賃金は上昇してくる。最近の賃金が3%近くまで上昇してきても、物価も同じように上昇して、実質賃金が伸びないのと逆になるのだ。
これは企業収益の低下をもたらす。加えて貿易戦争の結果として、企業のコストは想定以上に上昇してくる。関税は消費税と同じくコストアップ要因なのである。こういったコストを価格に転嫁できる企業は限られているからだ。
米国の企業収益は、今年に入って好調だが、これは減税効果が大きい。税引き前利益でみると減益だ。先行きに自信のもてない債券市場では、長期金利の上昇が限られ、短期金利が引き上げられていくと、長短金利差が消えていく。これはバブル崩壊に向けて株価の下落を促すだろう。
大幅な減税と財政支出という需要政策で景気が支えられる時間は限られている。リーマン・ショック後の超金融緩和政策のやり過ぎがとがめられてきているのだ。
2018 / 09 / 07 07:00
新聞掲載情報
2018年8月31日 日本経済新聞『十字路』
『金融正常化と新興国バブル』
米国の金融正常化は、新興国から先進国への資金の還流を促し、新興国通貨を下落させる。新興国は通貨防衛のための金融引き締めを余儀なくされ、経済の停滞を受け入れざるを得なくなってきている。インドやインドネシアがその典型的な事例だが、新興国経済の成長鈍化は、資源価格、とりわけ原油価格に大きな影響を与えることになる。
これまで十数年間、先進国の石油消費量は緩やかに縮小してきたが、他方で中国やインドなどの需要拡大で世界全体では増えてきている。この新興国の需要が経済の低成長化とともに増えなくなってくると、需給は緩み、石油価格を下落させる。これは中東産油国の政治体制を不安定化させ、供給不安から原油価格を高騰させるリスクが大きい。
イランによるホルムズ海峡閉鎖のリスクもそうだが、原油価格が高騰すると、一時的な混乱は別として、節約と代替エネルギーへの努力が一段と進み、脱石油時代の到来を早めることになる。環境問題からすると、これは望ましいシナリオだが、その過程で中東だけでなく、新興国の政治経済の動揺は大きなものにならざるを得ない。債務問題は一段と深刻化するであろう。
米国や欧州、日本の中央銀行による超金融緩和政策は多くのバブルを作り出した。なかでも大きかったのが、新興国の高成長バブルである。先進国から資本を取り入れ、工業化投資を急ぎ過ぎたのだ。中国の過剰設備、過剰債務もそうだが、金融の正常化という引締めが始まると全てが逆回転してしまう。外国資本に頼る成長の脆さだ。
バブルということでいえば、先進国の不動産や株価もあるが、最初にはじけてきたのが新興国バブルだといってよい。弱いところから始まるのだ。この調整の先にある次の時代の前向きのシナリオが構築されなくてはならない。