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2018 / 07 / 12  07:00

新聞掲載情報

2018年7月11日 日本経済新聞『十字路』

米国ファーストのドル不足
 米国ファーストの経済政策は、中国をはじめとする新興国に大きな打撃を与える。経済政策のなかでも、減税と金融引き締めが、貿易摩擦以上に打撃を与えてきている。ドル不足である。
 昨年末に成立した税制改革によって、米国の多国籍企業が海外に滞留させていた留保利益(約2兆ドル)への1回限りの課税と、新たに発生する利益に対する非課税措置によって、マネーの流れが大きく変化している。これまでは、米国に持ち帰ると35%の税を払う必要があったが、海外に留保したドルも新規のドルも非課税で持ち帰ることが出来るようになったからだ。
 昨年第4四半期には、3010億ドル(年換算)海外に留保していた利益が、本年第1四半期には、6330億ドルの米国への送金となった。1兆ドル近い逆転だ。海外銀行のドル預金がそれだけ減少し、海外市場でのドル不足が顕在化、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)3ヶ月物も2.3%まで上昇している。
 さらに大幅減税と財政支出の増加による国債の発行増に加えて、FED(連邦準備制度)が量的引き締めに変わり、国債の売却を始め、市場への国債供給を増やし、海外投資家の資金が吸収されている。
 このようなドル不足は、米国が超金融緩和政策でドルを海外に垂れ流していた時代に、高成長を遂げてきた新興国には極めて厳しい。資本の流入と新興国自体の積極的な金融緩和政策によって、債務が異常に拡大してきたからだ。
 ドル不足とドル高は新興国通貨の下落を招き、金融と財政の引き締めを迫る。民間企業部門の債務のデフォルトが、これから大きく増えてくるだろう。米国発の貿易摩擦は、このネガティブな動きを加速させる。米国ファーストに対して、その他世界もまた国内重視政策に回帰しなくてはならないのである。
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2024.11.24 Sunday