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2018 / 04 / 26 07:00
新聞掲載情報
2018年4月25日 日本経済新聞『十字路』
『金融の正常化』
金融の正常化は過剰債務の削減を促す。超金融緩和政策の下で、膨大な債務が積み上がり、経済の規模からしても、企業収益や家計所得に比しても大きくなり過ぎたからである。金利が上昇してくると、借り手は金利負担に耐え切れず、その活動の縮小を余儀なくされ、不況が訪れる。
異常な金融政策の是正に動いているのは、米国だけでなく、中国もそうである。これが不況に向けての引き金になるとしても、これ以上、現状を引き延ばし、問題を拡大することは許されない、という決意である。この観点からすると、成長率やインフレが加速しようと、減速しようと、正常化の方向が変わることはない。株価が下落しても、銀行が倒産しようとしても、である。また不況化が進んでも、容易に利下げに向かうこともない。
FED(連邦準備制度)の利上げを受けて短期金利は上昇してきているが、10年債利回りが3%程度でもみあっているのは、先行きの経済の見通しが悪化してきているからだ。これを企業業績の当面の好調さと合わせて「適温相場」と楽観視するのは、「ニューノーマル」時代への認識が欠けている。例えば、長短金利差の縮小は、銀行の収益力の悪化を示すだけでなく、その貸出意欲の低下をもたらすのである。
1980年代初頭からの金融緩和政策は債務を異常に増大させ、これが限界にきたのが住宅バブルの崩壊で、リーマン・ショックを引き起こした。問題は、このショックに対する処方箋として、より異常な緩和政策で2010年代の経済を支えてきたことだ。
これが再度、限界にきた状況での「ニューノーマル」時代だ、と捉えると、我が国には、こういった危機感が全くない。残念ながら、企業も家計も、自助努力でリスクに備えるしかないのである。