中前国際経済研究所(Nakamae International Economic Research)

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2017 / 09 / 01  00:00

新聞掲載情報

2017年9月1日 日本経済新聞『十字路』

消費減税と企業増税
  国内経済を活性化させるには、国内需要、とりわけ消費を増やしていく必要がある。法人税制を変えても、企業は需要のないところでは投資をしない。勝ち組企業が、さらに大きな需要を求めて海外で投資を拡大していくのは当然だからである。
 消費を増やすには家計の税負担を大幅に軽減する一方、企業の負担を増やし、これまでの分配政策を逆転させることが必要だ。可処分所得を増やして消費を伸ばし、国内企業の賃上げを可能にする好循環に持ち込むのだ。
 消費を増やし、国内経済の活性化を図ることは、技術革新の加速への対応としても重要だ。技術革新が企業間格差をさらに拡大させるからである。トップ企業とその他企業との間で、生産性上昇率の格差が拡大し、それが利益と賃金に反映される。
 グローバリゼーションの下で労働分配率が下がり、誤った分配政策と相まって、家計の可処分所得の低下が続く。その中で企業間の格差拡大が、所得格差の進行を一段と大きくしていく。経済ナショナリズムが台頭してくるのは、勝ち組企業の大半が多国籍化を加速させるのに対して、国内企業の大半を負け組として放置してきたからだ。
 日本の場合でいうと、1人当りの付加価値額(法人企業統計年報、2015年度)は大企業で1530万円、中小企業で570万円、零細企業で410万円である。1人当たり人件費は、それぞれ680万円、390万円、300万円。従業員数でいうと、大企業680万人、中小企業2160万人、零細企業1020万人だ。
 投資には課税せず、消費を抑圧する消費税の欠陥は、消費に頼るこれら中小企業にとって大きな負担となる。消費税を社会保障費と連動させるのではなく、消費喚起の観点から、考え直すことが求められているのではないか。

 

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