中前国際経済研究所(Nakamae International Economic Research)

2017年10月30日、ホームページをリニューアルしました。 

新着情報

2017 / 11 / 10  00:00

新聞掲載情報

2017年11月10日 日本経済新聞『十字路』

金融政策の正常化は可能か
 世界経済の基調が弱いのは、サービス化が進み、生産性が上昇しなくなったからである。AI化の加速は製造業のような効率的な部門の生産性を一段と高め、その雇用を削減していく。一方で、介護や看護、外食といった相対的に非効率な部門では、生産性が上がらない中で雇用が増えていく。
 米国では、2007年から16年にかけて製造業の生産性は年率1.4%上昇したが、労働投入量は1.1%減と、雇用の減少が生産性の上昇をけん引した。逆に介護では労働投入量が2.8%も増えたが、生産性は0.9%下がった。製造業の生産性(時間当り付加価値生産額)73ドルに対して介護は18ドルと、73ドル産業から18ドル産業に雇用がシフトしたのだ。
 経済全体の生産性と賃金が上がらない中で経済が成長できたのは、ローンに頼って消費が堅調だったからだ。量的金融緩和の効果で不動産や株価が上昇し、その資産効果でローンが拡大してきた。結果的に、直近の家計の貯蓄率は3.1%とリーマン・ショック直前の07年以来の低さとなっている。
 中国もサービス化が加速している。10年代に入り、第2次産業の就業者が全体に占める割合が24%で横這いの一方、第3次産業は42%から49%に上昇、第1次産業は34%から27%に低下し、脱農業化とサービス化が進んでいる。ここでも最大の問題は、産業間の生産性格差である。第2次産業の生産性(1人当り付加価値生産額)1万5500ドルに対して、第3次産業が6800ドル、第1次産業は1900ドルでしかないのだ。
 米中だけでなく、主要国の生産性は上がらなくなった。この経済を超金融緩和政策で支え続ければバブルが拡大するだけだ。しかし、これを是正するリスクもまた大きく、政治は本格的な正常化も改革も出来ないだろう。
2017 / 10 / 30  00:00

ホームページ リニューアルのお知らせ

2017年10月30日、中前国際経済研究所のホームページをリニューアルしました。
より使いやすく、よりわかりやすいホームページとなるよう、ページ構成やサイトデザインを全面的に見直しました。
リニューアルにあたり、トップページのアドレス(http://www.nier.co.jp/)に変更はありませんが、
トップページ以外 のページについては、アドレスが変更になっております。
各ページをブックマーク等に登録されている方は、お手数をおかけしますが変更をお願いいたします。
今後とも、内容の充実を図るとともに、よりわかりやすい情報をタイムリーに発信してまいりますので、
何卒よろしくお願い申し上げます。
2017 / 10 / 05  00:00

新聞掲載情報

2017年10月5日 日本経済新聞『十字路』

『経済ナショナリズムの論理』
 グローバリゼーションの後退は、貿易依存度の低下に表れる。企業の多国籍化が進み、地産地消が定着してきた結果である。中国など新興国の賃金の上昇や、AI化の加速による国際間の賃金格差が縮小したことも大きい。
 対外直接投資も、生産や輸出基地として中国に投資する時代から、中国の需要にのみ対応する投資に限定されてきた。中国の輸出依存度は2007年の35%から直近では19%まで下がり、経常黒字の国内総生産(GDP)比も10%から1.5%に低下した。
 経済成長率の急低下に見られるように、過剰設備と過剰債務の負担が大きく、中国も消費を中心とした内需の拡大に向かわざるをえない。金融緩和による不動産投資の刺激は、バブルを加速するだけだからである。
 グローバリゼーションの下で、先進国は企業の国際競争力の強化を掲げ、金融緩和による通貨安と減税による企業優遇政策をとったが、国内需要の創出に失敗し、結果的に企業の多国籍化を促進しただけであった。
 他方で財政赤字を補填するための消費税などによる家計負担の増大は、消費を低迷させてきた。このような負の政策の連鎖を逆にして、消費の活性化をはかることが、新たな国際競争の主戦場になろうとしている。経済ナショナリズムである。
 消費が強くなると企業の国内売り上げは増え、賃金の引き上げが可能となり、これがまた消費を強くするという好循環を生み出す。我が国でいえば、国内でしか生きていけない中小企業や自営業を活性化させていくだろう。
 そのために何をなすべきか。最も有効なのは、消費税の撤廃であり、貯蓄利回りの引き上げである。財政赤字には、巨額の資金余剰を生み出している企業への増税で対応すればよい。企業も結果的に潤ってくるのだから。
2017 / 09 / 01  00:00

新聞掲載情報

2017年9月1日 日本経済新聞『十字路』

消費減税と企業増税
  国内経済を活性化させるには、国内需要、とりわけ消費を増やしていく必要がある。法人税制を変えても、企業は需要のないところでは投資をしない。勝ち組企業が、さらに大きな需要を求めて海外で投資を拡大していくのは当然だからである。
 消費を増やすには家計の税負担を大幅に軽減する一方、企業の負担を増やし、これまでの分配政策を逆転させることが必要だ。可処分所得を増やして消費を伸ばし、国内企業の賃上げを可能にする好循環に持ち込むのだ。
 消費を増やし、国内経済の活性化を図ることは、技術革新の加速への対応としても重要だ。技術革新が企業間格差をさらに拡大させるからである。トップ企業とその他企業との間で、生産性上昇率の格差が拡大し、それが利益と賃金に反映される。
 グローバリゼーションの下で労働分配率が下がり、誤った分配政策と相まって、家計の可処分所得の低下が続く。その中で企業間の格差拡大が、所得格差の進行を一段と大きくしていく。経済ナショナリズムが台頭してくるのは、勝ち組企業の大半が多国籍化を加速させるのに対して、国内企業の大半を負け組として放置してきたからだ。
 日本の場合でいうと、1人当りの付加価値額(法人企業統計年報、2015年度)は大企業で1530万円、中小企業で570万円、零細企業で410万円である。1人当たり人件費は、それぞれ680万円、390万円、300万円。従業員数でいうと、大企業680万人、中小企業2160万人、零細企業1020万人だ。
 投資には課税せず、消費を抑圧する消費税の欠陥は、消費に頼るこれら中小企業にとって大きな負担となる。消費税を社会保障費と連動させるのではなく、消費喚起の観点から、考え直すことが求められているのではないか。

 

2017 / 07 / 26  00:00

新聞掲載情報

2017年7月26日 日本経済新聞『十字路』

消費はいかに低迷してきたか
 消費が低迷してきたのは、経済成長が止まったなかで、労働分配率の低下と、家計の税と社会保険料負担の上昇が続いてきたためだ。法人減税ではなく、家計減税こそ求められているのである。
 国内総生産(GDP)統計を実態をより良く表すように、現金のやり取りを伴わない持ち家の帰属家賃等を除いたキャッシュフロー・ベースに整理し直してみよう。
 日本の名目GDPは、1997年の498兆円をピークに2015年の488兆円まで、10兆円減少した。一方、家計の消費は244兆円から250兆円に6兆円増加した。だが、その裏には貯蓄の56兆円から22兆円までの急減という代償がある。
 家計の賃金と財産所得という第1次所得バランスでみると、賃金俸給と自営業者の混合所得がそれぞれ22兆円、19兆円減少し、財産所得も5兆円減っている。合計で15年の家計の所得バランスは263兆円と、97年の309兆円から46兆円も減少した。
 さらに問題なのは、家計の税負担の上昇である。所得税など経常税の29兆円に加えて、社会保険料の負担37兆円、合わせて66兆円は、修正した第1次所得バランス263兆円の25%になる。97年には20%であった。
 もう一つ大きいのは、消費税などの間接税の増加である。間接税は最終消費者である家計がその大半を負担する。それを15年の間接税41兆円の7割強(国内最終消費に占める家計消費の割合)、30兆円とすると、家計消費250兆円といっても、実際の消費は220兆円でしかない。
 この間、状況が改善したのが企業部門である。労働分配率の低下を映して、収益が増えただけでなく、固定資本減耗の増加にみられる非課税のキャッシュ・フローが大きく増え、貯蓄は家計を超えている。減税が必要なのは、企業よりも家計なのである。

 

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2017.12.12 Tuesday