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2017 / 07 / 26  00:00

新聞掲載情報

2017年7月26日 日本経済新聞『十字路』

消費はいかに低迷してきたか
 消費が低迷してきたのは、経済成長が止まったなかで、労働分配率の低下と、家計の税と社会保険料負担の上昇が続いてきたためだ。法人減税ではなく、家計減税こそ求められているのである。
 国内総生産(GDP)統計を実態をより良く表すように、現金のやり取りを伴わない持ち家の帰属家賃等を除いたキャッシュフロー・ベースに整理し直してみよう。
 日本の名目GDPは、1997年の498兆円をピークに2015年の488兆円まで、10兆円減少した。一方、家計の消費は244兆円から250兆円に6兆円増加した。だが、その裏には貯蓄の56兆円から22兆円までの急減という代償がある。
 家計の賃金と財産所得という第1次所得バランスでみると、賃金俸給と自営業者の混合所得がそれぞれ22兆円、19兆円減少し、財産所得も5兆円減っている。合計で15年の家計の所得バランスは263兆円と、97年の309兆円から46兆円も減少した。
 さらに問題なのは、家計の税負担の上昇である。所得税など経常税の29兆円に加えて、社会保険料の負担37兆円、合わせて66兆円は、修正した第1次所得バランス263兆円の25%になる。97年には20%であった。
 もう一つ大きいのは、消費税などの間接税の増加である。間接税は最終消費者である家計がその大半を負担する。それを15年の間接税41兆円の7割強(国内最終消費に占める家計消費の割合)、30兆円とすると、家計消費250兆円といっても、実際の消費は220兆円でしかない。
 この間、状況が改善したのが企業部門である。労働分配率の低下を映して、収益が増えただけでなく、固定資本減耗の増加にみられる非課税のキャッシュ・フローが大きく増え、貯蓄は家計を超えている。減税が必要なのは、企業よりも家計なのである。

 

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