中前国際経済研究所(Nakamae International Economic Research)

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2018 / 09 / 07  07:00

新聞掲載情報

2018年8月31日 日本経済新聞『十字路』

金融正常化と新興国バブル
 米国の金融正常化は、新興国から先進国への資金の還流を促し、新興国通貨を下落させる。新興国は通貨防衛のための金融引き締めを余儀なくされ、経済の停滞を受け入れざるを得なくなってきている。インドやインドネシアがその典型的な事例だが、新興国経済の成長鈍化は、資源価格、とりわけ原油価格に大きな影響を与えることになる。
 これまで十数年間、先進国の石油消費量は緩やかに縮小してきたが、他方で中国やインドなどの需要拡大で世界全体では増えてきている。この新興国の需要が経済の低成長化とともに増えなくなってくると、需給は緩み、石油価格を下落させる。これは中東産油国の政治体制を不安定化させ、供給不安から原油価格を高騰させるリスクが大きい。
 イランによるホルムズ海峡閉鎖のリスクもそうだが、原油価格が高騰すると、一時的な混乱は別として、節約と代替エネルギーへの努力が一段と進み、脱石油時代の到来を早めることになる。環境問題からすると、これは望ましいシナリオだが、その過程で中東だけでなく、新興国の政治経済の動揺は大きなものにならざるを得ない。債務問題は一段と深刻化するであろう。
 米国や欧州、日本の中央銀行による超金融緩和政策は多くのバブルを作り出した。なかでも大きかったのが、新興国の高成長バブルである。先進国から資本を取り入れ、工業化投資を急ぎ過ぎたのだ。中国の過剰設備、過剰債務もそうだが、金融の正常化という引締めが始まると全てが逆回転してしまう。外国資本に頼る成長の脆さだ。
 バブルということでいえば、先進国の不動産や株価もあるが、最初にはじけてきたのが新興国バブルだといってよい。弱いところから始まるのだ。この調整の先にある次の時代の前向きのシナリオが構築されなくてはならない。

 

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