中前国際経済研究所(Nakamae International Economic Research)

2017年10月30日、ホームページをリニューアルしました。 
 03-3595-3001
お問い合わせ

新着情報

2018 / 03 / 28  10:00

補足資料を追加しました

2018年3月20日 の日本経済新聞『十字路』に掲載された
「減税効果と金利上昇効果」について、補足資料を追加しました
詳細はhttp://nier.co.jp/free/libraryをご覧下さい。
2018 / 03 / 22  07:00

新聞掲載情報

2018年3月20日 日本経済新聞『十字路』

減税効果と金利上昇効果
 設備投資が増えるためには、消費需要の拡大が必要だ。法人税率の引下げだけでは、投資誘因にはならない。従って、今回の米国の減税で重要なのは、家計向け減税の消費刺激効果である。         
十年間で総額1.45兆ドルの減税の内訳は、1.1兆ドルが家計向けで、0.35兆ドルが企業向けである。家計向けは8年間の限定なので、年平均1,400億ドル弱、消費の1%強だ。法人減税だけが喧伝されるなかで、家計を無視できなくなってきている現実がある。              
 失業率の低下に見られる完全雇用下でのこの減税を、景気の過熱とインフレの加速とみて、市場は金融政策の引締めと市場金利の上昇に結びつける。消費が一段と盛り上がり、設備投資の増加に結びつく、という見方からだ。
 問題は、米国景気の上昇期間が9年目という長期に亘っていることだ。しかも、この上昇は金融の超緩和でもたらされ、債務が異常に積み上がっている。FRB(連邦準備制度)の利上げも、緩やかとはいえ2年以上続いている。クレジット・カードや自動車、住宅などローンの金利が上昇し、不良債権化も目立ち始めている。金利上昇が進めば、デフォルトは一段と増えてくる。減税効果がこの金利上昇効果を打ち消すほど大きいとは考えられない。
 それでも、財政赤字は一段と拡大し、景気の大きな減速がなければ、貿易赤字も縮小せず、双子の赤字がドルに対する信認を揺るがし続けるだろう。実際、大統領選後の短いトランプ・ラリー後の十六年十二月末以来、ドル指数は低下し続けている。金利上昇の下で、である。
 こういったなかでは、FEDは景気減速の下でも金融の正常化を推し進めて行かざるを得ない。長年に亘ってマネーを拡大し過ぎたコストなのである。

 

2018 / 01 / 16  07:30

講演録「日米経済の現状と見通し29」

昨年12月に行った講演をもとに「日米経済の現状と見通し29」を作成致しました。
1冊1000円(郵送費込)で販売致します。
 
ご希望の方は、ホームページ上の「お問い合わせ」のMailで、
お名前・送付先ご住所・お電話番号・ご希望の冊数をお知らせ下さい。
折り返しのMailでお支払い方法をご連絡のうえ、ご送付申し上げます。
今後とも、内容の充実を図るとともに、
よりわかりやすい情報をタイムリーに発信してまいりますので、
何卒よろしくお願い申し上げます。
2017 / 12 / 13  00:00

新聞掲載情報

2017年12月13日 日本経済新聞『十字路』

なぜ家計ファーストか
 技術革新は、企業間の生産性格差を拡大する。技術革新の恩恵が上位企業に集中し、そのマーケットシェアと利益を押し上げる。他方で、生産性の上昇は、上位企業の雇用の削減を可能にするだけでなく、マーケットシェアの下がる下位企業の雇用も減少させる。結果的に、技術革新の著しい産業の高賃金労働が、低生産性・低賃金産業に移動していくことになる。
 経済協力開発機構(OECD)によると、製造業のグローバル上位5%の企業の生産性は、2001年から13年にかけ33%上昇した。しかし、残りの95%の企業では7%しか伸びていない。先進国の製造業では雇用が縮小しているが、サービス部門でも、情報通信のような技術革新の著しい分野では同じである。
 生産性の高い産業から生産性の低い低賃金産業に労働が移動していく。このように技術革新の結果として、経済全体では労働生産性が低下してくるのである。賃金の場合も同様である。
 米国でみると、製造業の一人あたり付加価値額(労働生産性、16年)は73ドル、介護は18ドル。一方、07年から16年にかけて、労働投入量は製造業で年率マイナス1.1%なのに対して、介護では2.8%も伸びている。
 これまでのところ、経済全体としては、技術革新を使いこなしていない。それでも技術革新は、製造業の就業者数を減らし、サービス部門の就業者を増やし続けていく。これが低賃金ではなく、高賃金のサービス業でなければ、格差は拡大するだけだ。
 高付加価値の新産業を見つけなくてはならないが、これは市場の役割である。政策の役割は、起業家を通じて市場が機能するのを助けるために、消費者の購買力を増やすことにつきる。これが市場主義である。そのためにこそ、家計ファーストの税制改革が必要になってくるのである。

 

2017 / 11 / 10  00:00

新聞掲載情報

2017年11月10日 日本経済新聞『十字路』

金融政策の正常化は可能か
 世界経済の基調が弱いのは、サービス化が進み、生産性が上昇しなくなったからである。AI化の加速は製造業のような効率的な部門の生産性を一段と高め、その雇用を削減していく。一方で、介護や看護、外食といった相対的に非効率な部門では、生産性が上がらない中で雇用が増えていく。
 米国では、2007年から16年にかけて製造業の生産性は年率1.4%上昇したが、労働投入量は1.1%減と、雇用の減少が生産性の上昇をけん引した。逆に介護では労働投入量が2.8%も増えたが、生産性は0.9%下がった。製造業の生産性(時間当り付加価値生産額)73ドルに対して介護は18ドルと、73ドル産業から18ドル産業に雇用がシフトしたのだ。
 経済全体の生産性と賃金が上がらない中で経済が成長できたのは、ローンに頼って消費が堅調だったからだ。量的金融緩和の効果で不動産や株価が上昇し、その資産効果でローンが拡大してきた。結果的に、直近の家計の貯蓄率は3.1%とリーマン・ショック直前の07年以来の低さとなっている。
 中国もサービス化が加速している。10年代に入り、第2次産業の就業者が全体に占める割合が24%で横這いの一方、第3次産業は42%から49%に上昇、第1次産業は34%から27%に低下し、脱農業化とサービス化が進んでいる。ここでも最大の問題は、産業間の生産性格差である。第2次産業の生産性(1人当り付加価値生産額)1万5500ドルに対して、第3次産業が6800ドル、第1次産業は1900ドルでしかないのだ。
 米中だけでなく、主要国の生産性は上がらなくなった。この経済を超金融緩和政策で支え続ければバブルが拡大するだけだ。しかし、これを是正するリスクもまた大きく、政治は本格的な正常化も改革も出来ないだろう。
2024.11.26 Tuesday