中前国際経済研究所(Nakamae International Economic Research)

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2018 / 11 / 16  14:30

新聞掲載情報

2018年11月13日 日本経済新聞『十字路』

『中国はなぜ成長できなくなったのか
 中国経済が急減速しているのは、雇用が減少し、生産性の伸びが落ちてきたからである。1990年代以降の急速な工業化の下で、第2次産業の就業者数は、昨年で全産業の27%に達しているが、2010年代に入ると毎年減少している。生産性の最も高い第2次産業が拡大できなくなったため、全体の生産性の上昇が鈍ったのである。
 国際労働機関によると、17年の就業者数は前年比マイナス0.2%と2年連続の減少だ。1人当たり付加価値額(実質、生産性)の伸びは07年の13.3%から17年の6.6%まで下がった。結果として成長率は6.4%になるが、実態はもっと低いはずだ。
 第2次産業の1人当たり付加価値額は1万5500ドル(国連、15年)だが、第3次産業は6800ドル、第1次産業は1900ドルと大変に大きい格差だ。生産性の一番低い第1次産業から、一番高い第2次産業に労働力が移行する工業化が終わり、脱農業化から出てくる余剰労働力は第3次産業に向かわざるを得なくなっている。ちなみに、中国の第2次産業の就業者比率27%は、日本とドイツとほぼ同じだが、米国、英国では17%台でしかない。
 歴史的経験からすると、工業化が終わり、サービス化が始まると、成長率が大きく減速する。この過渡期に、工業化を急いだ国ほど過剰設備、過剰債務という難題が待ち受ける。中国が特に苦しいのは、この転換の時期に国際収支が悪化してきているからだ。
 経常収支の国内総生産(GDP)比が07年の10%台の黒字から、直近では若干の赤字に転落している。資本の流出を抑制しても、対外債務の返済のため人民元安への圧力が収まらない。米中貿易戦争は、中国にとって主戦場ではあるまい。経済の安定のための処方箋が見つかっていないことが主たる問題なのだ。
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2018.12.13 Thursday