中前国際経済研究所(Nakamae International Economic Research)

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2017 / 10 / 05  00:00

新聞掲載情報

2017年10月5日 日本経済新聞『十字路』

『経済ナショナリズムの論理』
 グローバリゼーションの後退は、貿易依存度の低下に表れる。企業の多国籍化が進み、地産地消が定着してきた結果である。中国など新興国の賃金の上昇や、AI化の加速による国際間の賃金格差が縮小したことも大きい。
 対外直接投資も、生産や輸出基地として中国に投資する時代から、中国の需要にのみ対応する投資に限定されてきた。中国の輸出依存度は2007年の35%から直近では19%まで下がり、経常黒字の国内総生産(GDP)比も10%から1.5%に低下した。
 経済成長率の急低下に見られるように、過剰設備と過剰債務の負担が大きく、中国も消費を中心とした内需の拡大に向かわざるをえない。金融緩和による不動産投資の刺激は、バブルを加速するだけだからである。
 グローバリゼーションの下で、先進国は企業の国際競争力の強化を掲げ、金融緩和による通貨安と減税による企業優遇政策をとったが、国内需要の創出に失敗し、結果的に企業の多国籍化を促進しただけであった。
 他方で財政赤字を補填するための消費税などによる家計負担の増大は、消費を低迷させてきた。このような負の政策の連鎖を逆にして、消費の活性化をはかることが、新たな国際競争の主戦場になろうとしている。経済ナショナリズムである。
 消費が強くなると企業の国内売り上げは増え、賃金の引き上げが可能となり、これがまた消費を強くするという好循環を生み出す。我が国でいえば、国内でしか生きていけない中小企業や自営業を活性化させていくだろう。
 そのために何をなすべきか。最も有効なのは、消費税の撤廃であり、貯蓄利回りの引き上げである。財政赤字には、巨額の資金余剰を生み出している企業への増税で対応すればよい。企業も結果的に潤ってくるのだから。
2024.11.24 Sunday