中前国際経済研究所(Nakamae International Economic Research)

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2017 / 03 / 10  00:00

新聞掲載情報

2017年3月10日 日本経済新聞『十字路』

中国リスクとトランプリスク

通貨の強さは経済の勢いを反映する。今世紀に入って、工業化が加速し、10%成長を遂げた人民元は大きく切り上がっていった。この中国の成長に陰りが出始めてから、人民元は急速に弱くなってきている。この通貨の強弱を決定する最大の要因は資本の流出入である。

2000年から14年央にかけて、中国の外貨準備は0.2兆ドルから4兆ドルに、3.8兆ドル増加している。累積経常黒字の2.4兆ドルに加えて、1.4兆ドルの資本流入があったからだ。14年央から16年末にかけても、経常黒字は0.7兆ドルの黒字となったが、外貨準備は1兆ドル近く減少した。資本流出が1.7兆ドルにも達した結果である。

中国経済に起こったのは、工業化の終焉(しゅうえん)である。

国内総生産(GDP)に占める第2次産業の比率が、06年の48%から15年には41%まで低下している。これに対して、第3次産業の比率は06年の41%から、15年には50%とサービス化が加速している。この過程で、輸出のGDP比は35%から19%に、経常黒字も10%から2%に急落している。

過剰設備を抱えるなかで、輸出が伸び悩み、工業生産の伸びも鈍化する。先進国の経 験では、生産性の高い製造業から低いサービス産業への移行過程で、経済全体の生産性が大きく落ちている。中国の場合、さらに問題なのは、少子高齢化の急速な進展によって、雇用の伸びが、直近では年率0.2%まで落ちてきていることだ。

こういった成長の急減速に対して、資本流出、人民元安という形で市場が反応してきたのが、14年央以降のことだ。人民元安リスクは、当分続くとみてよいが、これはトランプ政権の通商政策と真っ向から対立する展開となる。トランプ・チームの冷静な対応を望みたい。

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